【国際協力】なぜJICAがカンボジアで教員養成大学設立?
JICAでは、2017年から2022年にかけて、カンボジアで教員養成大学を設立します。
なぜなのか、その理由とJICAの狙いを探ります。
背景:
- カンボジアでは教員養成機関として、二年制の小学校教員養成校(Provincial Teacher Training Center: PTTC)、中学校教員養成校(Regional Teacher Training Center: RTTC) が設置されています。
- これらは1980年代以降の紛争復興期に、大幅な教員不足に対応するための短期講習の形で開始され、1998年から現在の二年制になっていますが、教員の質の確保が大きな課題になっています。実際に、教員養成校入学資格は国家試験である中等教育修了資格(12年生)とされているものの、世銀の報告書によるとPTTCの80%,RTTCの70%以上が上記試験でDまたはEの成績で合格した「成績下位グループ」であることが指摘されています。その要因の一つは、教員の待遇の悪さ。教員たちが安心して知識や技術を磨く状況にあるとは言えません。
- カンボジアでは2015年8月に産業開発政策(Industrial Development Policy 2015-2025:IDP)が発表され、今後も経済成長を維持していくためには、産業の多様化などが重要であるとされ、産業人材育成の必要性が指摘されています。カンボジア教育・青年・スポーツ省は、産業人材育成を主な目的とした教育改革を推し進めており、基礎・中等教育、高等教育、技術教育において大規模な改革を実施しています。
- 具体的には、教員の質の向上のため、全小・中学校教員の学士化を主要な政策として掲げています。そのために、教員養成課程を2020年までに大学化(Teacher Education College: TEC)することを目標として掲げ、現行の「12+2制」から「12+4制」とすることを課題にしています。
- 近年の改善点としては、教育省による中等教育修了資格試験でのカンニング防止、教員養成校に成績優秀者を優先入学させる、教員の給料の増額(2013年の78ドルから2017年の230ドル)と約3倍に。
- JICAではこのプロジェクトと並行して、教員養成大学の教員となる人材が4年間で計20名、日本の大学院に留学するための奨学金プログラムも実施予定。
プロジェクト名:教員養成大学設立のための基盤構築プロジェクト(E-TEC)
JICAの目的:
- JICAは、首都プノンペンと第二都市バッタンバンで、教員養成大学の組織運営体制の設立支援(技術協力)と施設建設支援(無償)をしています。
- それにより、質の高い小・中学校教員の輩出・基礎教育の質の向上を目指しています。
- 具体的には、4年制カリキュラムの開発およびその運用を支援しています。
目標:
- 上位目標:TEC卒業教員が教える生徒の学習成果の向上
- プロジェクト目標:質の高い小中学校教員がTECから輩出される。
プロジェクト目標は、どのように教員の質を測るのか気になります。
2018年から、TECの管理職(学長・副学長)9名を対象に運営管理のワークショップ等が開催されています。2017年には広島大学での研修で作成された原案に基づいています。
2018年度に学士課程の第1期生を迎える予定で、プロジェクト期間が終わる2022年度には初めての卒業生を送り出し、この取り組みを全国に広めるための基盤ができる予定です。
E-TECのチームリーダー高橋光治さんは
パデコ コンサルタントのご経験があります。主にネパール、カンボジアで算数教育に関する技術支援を実施した経験をお持ちです。
2020年3月には、奈良教育大学と島根大学の教授により、数学の授業のシラバス作成が行われました。
参考文献:
https://www.jica.go.jp/cambodia/office/others/ku57pq00000seur9-att/newsletter_no69.pdf
https://www.jica.go.jp/project/cambodia/0601296/02/member.html