人と文化と自然の交差点

なぜ私たちの目の前にある文化が文化足らしめられているのか、考えていきます。

【国際協力】なぜJICAがネパールで教育の質向上を支援?

JICAは、2019年から2024年にかけて、ネパール全土で

児童用算数教材および教師用ハンドブックを開発し教員研修を行うことにより、

小学校低学年(G1-3)の算数の授業の質の向上を図り、小学校低学年児童の算数の基礎学力の向上を目指しています。

 

JICAの狙いを見ていきます。

 

背景:

  • ネパール政府はEFA,MDGsの達成に向け2009年から7年間 学校セクター改革プラン (School Sctor  Reform  Plan: SSRP) (2009-2015)を実施してきました。その結果、初等教育の純就学率は93.7%から96.6%へと改善され、一定の成果があったと考えられています。
  • しかし、地域・民族間における教育アクセス・学力格差、公立と私立の学力格差の拡大が指摘されています。
  • 学力低下も問題です。教育科学技術省(MOEST)が定期的に実施している全国学力調査(National Assessment of  Studennt Achievement: NASA)によると、2012年および2015年は小学校3年生と5年生の間で算数、ネパール語、英語共に学力低下が見られます。
  • SSRPの後継として、学校セクター開発計画(School Sector Development Plan: SSDP)(2016-2023)では、教育の質の向上に重点を置き、算数、理科、英語といった科目に関する学力向上を目指しています。
  • JICAは、喫緊に取り組むべき課題とされる基礎的な算数能力の向上を支援。学力テストのスコアが基礎教育の質に関する成果指標に含まれます。

 

日本政府とJICAの狙い

  • 2016年の外務省国別開発協力方針にて、重点分野として「貧困削減および生活の質向上」を掲げ、教育の質の向上に取り組むとしています。
  • JICAとしても、初等教育改善支援が協力方針の1つ(JICA国別分析ペーパー)、「学びの質」の改善を最重要課題として、カリキュラム、教科書・学習教材、授業、学力評価(アセスメント)の一貫性を持たせ、「学びのサイクル」を強化していく方針および理数科教育の重視が示されている。
  • これまで、「小学校運営改善支援プロジェクトフェーズ1(SISM1)」(2008−2011)にて、対象2郡で住民参加による学校運営委員会(SMC)の運営能力の向上および地方教育行政官による学校支援強化を支援。「SISMモデル」が開発された。

 

他の援助機関の対応:

  • ネパールでは、2009年から基礎教育サブセクターにおいてセクターワイドアプローチが行われている。
  • プールファンド支援ドナーは世銀、アジア開発銀行EUノルウェー、GPE、フィンランド、オーストラリア外務通商省(DFAT)、UNICEFであり、USAIDも支援を検討中。
  • 特に世銀とADBは財政支援が中心で、財政ドナー拠出額の約65%をしめる。
  • 世銀はG6以上の中等教育、特に数学、理科、英語のカリキュラム支援およびNASAの分析能力向上など。
  • ADBは中等教育にフォーカスした理数科教育、ICT支援
  • UNICEFは幼児教育・就学前教育、教育の質向上、若者の識字とライフスキル、など。
  • フィンランドは9年生から10年生における必須科目において、ソフトスキルを習得させるための教員研修モジュール開発など、
  • USAIDは低学年読書プログラムを実施している。

 

参考文献

www.jica.go.jp